先日、アーティゾン美術館へ「彼女たちのアボリジナルアート」を観に行きました

アーティゾン美術館へ

東京駅の丸の内南口。まだまだ夏の暑さが残っていて、ジリジリと暑いです。本日は丸の内にあるアーティゾン美術館へ「彼女たちのアボリジナルアート」を観に行くことにしました。妻がアボリジニの楽器であるディジュリドゥをやっていて、アボリジニの生活様式にも興味があるのでさそわれたのです。

事前に少しだけ展示について調べてみました。アボリジナルアートは、単なる絵画ではなく、歴史や物語、そして大地そのものを表現しているのだと知り、静かな高揚感を感じます。

丸の内という街は、いつも洗練されていて、歩くだけで気分が上がります。整然と並んだオフィスビル、広々とした通り、行き交う人々は皆、目的を持って歩いているように見えます。そんな光景を眺めながら、美術館への道をゆっくりと歩きます。街路樹の緑が目に優しく、都会の喧騒の中に、ふと安らぎを感じました。

目的地であるアーティゾン美術館が見えてきました。ガラス張りのモダンな建物に、今日の展示を知らせるポスターが掲げられています。**「彼女たちのアボリジナルアート」**と書かれたポスターは、シンプルなのに、なんだか力強いオーラを放っていました。

重厚な扉をくぐると、外界の喧騒が遠のき、静かな空気に包まれます。受付を済ませ、荷物をロッカーに預け、一番奥にある展示室へ。扉を開けるその瞬間、これから始まる未知の体験に胸がドキドキしました。

異世界への第一歩、アボリジナルアートとの出会い

白い壁に囲まれた空間に、ドットで描かれた色彩豊かな作品がいくつも並んでいました。一つひとつの作品が放つエネルギーに圧倒されて、思わず息をのんでしまいます。誰かと感動を分かち合うことはできないけれど、その分、作品が直接、心に語りかけてくるような気がしたんです。

壁を埋め尽くすように、無数の小さな正方形の作品が並んでいました。一つひとつに異なる模様や色が描かれていて、まるで細胞や宇宙の星々を覗いているようでした。

解説パネルに目をやると、そこに描かれているのは「ドリームタイム」という、アボリジニにとっての創世神話や、精霊が旅した痕跡、そして彼らの土地の地図であることがわかりました。単なる抽象画じゃないんですね。このドットの一つひとつに、意味が込められている。作品に近づいてじっくり観察すると、緻密な点の集合が、遠くから見ると壮大な風景や物語となって浮かび上がります。なんだか、遥か昔から続く人々の記憶を辿っているような感覚に陥りました。

別の部屋では、黒い壁に浮かび上がるように、布に描かれたアートが展示されていました。

このアートは、樹皮に描かれたものだろうか。太古の昔から受け継がれてきた、自然と共生する彼らの暮らしが伝わってくるようでした。

これはアボリジナルアートとは少し異なる、現代的なインスタレーションだろうか。でも、どこか彼らの文化と共通する精神性を感じました。それは、自然の恵みや、生命の循環を表現しているように思えました。

心に響く、彼女たちの声

展示を奥へ進むと、女性作家たちによる作品を集めた一角がありました。そこに展示されていたのは、男性作家の作品とはまた違う、温かく、そして力強い作品の数々です。

壁一面に飾られた、鮮やかな色彩の植物の細胞の写真は圧巻でした。

このドットは、大地の花々や、生命の息吹を表現しているように見えました。女性ならではの、大地を育み、命を守る視点が、この絵全体から感じられます。

そして、別の壁には、藍染のような青い布に描かれた三つの作品が並んでいました。

真ん中の作品は、まるで雨が降る様子を表しているかのようです。一番右の作品には、女性の横顔が描かれていて、その中に植物の模様が浮かび上がっています。彼女たちの作品は、コミュニティ、大地、そして生命の繋がりを、深い愛情を持って描いているように感じられました。静かに観察していると、より深く作品と向き合えます。作品の背景にある物語が、心の中にゆっくりと染み渡っていくのを感じました。

アートが繋ぐ、過去と未来

展示室を出て、ミュージアムショップに立ち寄りました。余韻に浸りながら、アートブックやポストカードを手に取ります。誰かと感想を語り合うことはできないけれど、この感動を自分だけのものとして大切に持ち帰りたいと思いました。アボリジナルアートが持つ、途方もなく長い歴史と、それを現代に受け継ぐ女性たちの情熱に触れ、心の中が満たされていきました。

美術館を出て、東京駅前のカフェで休憩することにしました。窓の外には丸の内の街並みが広がっています。

グラスに注がれたビールを一口飲むと、今日観たアートの余韻に浸りながら、遠いオーストラリアの大地を想像しました。アートが過去と現在を繋ぎ、未来へと続いていくことの意味を改めて考えます。今日、心に深く刻まれたこの感動は、きっと自分自身の未来に何らかの影響を与えてくれるでしょう。美術館を出ると、丸の内の街並みが、来る前とは違って見えました。オフィスビルも、行き交う人々も、一つひとつの光景が、今日観たアートのように、何かの物語を秘めているようです。

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