青唐辛子をむしる

何度目かの収穫を迎え、畑の青唐辛子が青々とした実をたわわに揺らしている。唐辛子は夏から秋にかけて、収穫すればするほど次々と花を咲かせ、実をつける。三本も植えておけば、お店で使う分を含めても一年分は十分にまかなえるほど収穫できる。うちでは家でも店でもインドやスリランカのカレーをよく作るので、青唐辛子の消費量は比較的多いほうだが、それでも追いつかないくらい実り豊かだ。
今年の夏は記録的な暑さが続いた。そのせいか、真夏よりも秋口に入ってからのほうが実つきがよく、ひとつひとつの実も大きく張りのあるものになった気がする。青唐辛子に限らず、ナスやピーマンといった、もともと夏に元気なはずの野菜が、むしろ秋になってから力を発揮するという、なんとも不思議な現象が起きている。どうやら植物もあまりの暑さに体力を奪われ、実を結ぶ余力を失ってしまうらしい。炎天下でぐったりしていた苗が、涼しい風を得てようやく息を吹き返す姿には、どこか人間と同じ弱さやたくましさが重なって見える。
収穫した青唐辛子は、まず枝からやさしく摘み取り、水で軽く洗う。その鮮やかな緑を眺めていると、料理に使う前からすでに元気を分けてもらっているような気がする。洗った実は水気をふき取り、真空パックにして冷凍庫へ。こうして保存すれば一年ほどは香りも辛味も損なわれず、季節を問わず青唐辛子を楽しむことができる。真冬にカレーを作るとき、冷凍庫から取り出した青唐辛子を刻むと、夏から秋の畑の風景がふっとよみがえる。その感覚は、ただの食材保存を超えた小さな喜びがある。
温暖化の進行にともなって、年々、作物の栽培が難しくなっている。暑さや台風、虫食いとの戦いもある。それでも、手間をかけて育てた野菜を日々の食卓や店の皿にのせるとき、自然の恵みと時間の積み重ねが一緒に運ばれてくるように思う。青唐辛子の辛さは、ただ舌を刺激するだけでなく、季節を超えて記憶を呼び覚まし、生活を少し豊かにしてくれる存在なのかもしれない。
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